ナヌカビ通信 2025.9
何年ぶりかの雨の運行で6日の夜のねぶたが終わりヌカビのねぶたも無事海上運行を終えた。
ねぶた大賞は「青森菱友会 海王 竹浪比呂央 最優秀制作者賞」 知事賞は「ヤマト運輸ねぶた実行委員会 鬼童丸 北村隆」 市長賞は「JRねぶた実行プロジェクト 入雲龍 風を呼ぶ 竹浪比呂央」 商工会議所会頭賞は「青森市民ねぶた実行委員会 役小角 北村麻子 優秀制作者賞」 観光コンベンション協会会長賞は「プロクレアねぶた実行プロジェクト Nobunaga~天下創生Creatio mundi~ 野村昴史 優秀制作者賞 初」運行・跳人賞はヤマト運輸 囃子賞は日立連合ねぶた委員会がそれぞれ受賞した。ほぼ1年を掛けた青森ねぶたの労作に『アニ・オンジ(*1)』がついて2025年のねぶたは終わった。
参加ねぶたはそれぞれ大作ばかりで、市民や観光客を楽しませてくれたが、竹浪ねぶたが圧倒的に審査員の高得点を得た。流行りのねぶたではあるが、これからも竹浪一門と北村一門の切磋琢磨の競い合いは当分楽しめそうである。
今年は青森開港400年ということで、制作者の思いが込められたねぶたが多くあった。
その想像力の発揮は青森ねぶたならではのもので、他の祭りにはないものだろう。
流通と商人の街として発展してきた青森は、どん欲に他の地域から多くの物や事そして人を取り込んで街が大きくなった。その最たるものが青森ねぶたであろう。運行団体の資金量、メデイアの露出量など県内の他のねぶた祭りを凌駕し、ねぶた師たちもそれに応えて、精進して今日の青森ねぶたが形作られた。それは地政学的にも青森の誇りとされて当然である。
出発地点を2か所にしたのにコースを回り切れなかったねぶたが何台かあって苦情が出たという。ねぶたの運行がスムーズにいかなかった原因を解明して改善するということだが、そんな大ごとだろうか。以前に比べて格段に少なくなったハネトの数なのに、しかも跳ねている跳人などほとんどいない現在の青森ねぶたの何に改善を主催者は求めるのだろう。
有料観覧席の設置、審査制度の在り方、運行の在り方、など課題は何も変わっていない。
来てくれた観光客が気分よく祭りを楽しみ気分よく消費してくれることはどこの観光地でも課題である。宿泊費の高騰、他では味わえない名物料理・名産品の開発、界隈性の創出、この30年来青森の課題であり続けた。
観光客の入込数を今年は集計方法を変更して正確性を担保して後日公表するというが、どこまでするのだろう。観光事業としての青森ねぶたは商人の街青森にとっては、310億円と試算された経済効果こそが命題である。ねぶた師たちは「バエルねぶた」を作るために、来年に向けて構想を練り上げようと日々励んでいるのだから、信頼できる結果を望む。
ねぶた師たちはその技量を、本番の祭り以外の場所でも発揮して、生活の糧としている。いいことである。職業として成り立つまで頑張ってきたのであるから当然である。
運行団体がわも、高騰する経費を賄うため、メインスポンサーのみならず、様々なスポンサーを対象に「前ねぶた」の数を集めている。企業名や商品名など冠した実に多くの前ねぶたが運行されている。何でも飲み込んで取り入れてきた青森ねぶたなのだから非難されるべきではない。青森ねぶたは何でもありの伝統を作り続けてきたのである。少子化、人口減少それぞれの街のねぶたもそれぞれの人たちが楽しめればいい。
ナヌカビが過ぎても暑さの続く今年の青森。ようやく県内のねぶた祭りも終わり、秋祭りの季節になった。山々が色付き、でき秋を堪能して、クマに気を付けながら、すべてを真っ白にしてくれる冬を過ごして、来年のねぶた祭りを迎えましょう。ねぶた師の皆さん、来年も楽しみにしています。
注釈(1) アニ・オンジ 津軽弁で兄と弟のことで優劣をつけること