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ABOUT

ねぶた屋について

設立趣意

Establishing purpose

当初、デビュー間もない3人のねぶた師が、さらなる活動の場を創出しようと立ち上げたねぶた屋。ここに、ねぶた師の思いを紹介します。

設立から10年目を迎え、実績を重ねながら、活動の内容も体制も少しずつ変化してきました。現在は、子供たちにねぶた文化の魅力を伝えていくこと、ねぶた制作者を志す人材の育成環境の充実に資すること、この2つを柱として活動を続けています。
事業の内容に応じて、師匠や先輩方の協力を仰ぐとともに、弟子や後進の活動機会を創出するなど、より幅広いねぶた制作者のネットワークを築き、その拠点としての役割を果たしています。

「ねぶた屋」は、ねぶた制作を生業とすることを決意した制作者による団体です。

私たちは、それぞれの師匠がねぶた制作に心血を注ぎながら、家族を養い、制作スタッフを雇い、そして弟子を育てる。その姿を間近で見てきました。

若いうちは自身の生活の維持にも苦心し、独立して弟子をもつようになれば、制作集団を率い、後継者を育てるための資金も必要となる。生活の糧を得るために技術の研鑽を怠れば、いつ制作依頼が途切れるかもしれない。
ねぶたを制作する者の社会的、経済的地位はきわめて不安定な状況にあります。
このため、ほとんどのねぶた制作者は、他に本業を持たざるを得ず、この状況は、現在「ねぶた師」と呼ばれている専門の制作者が生まれて以来、ねぶたが世界に誇る青森市の観光資源となった今日まで続いています。

ねぶた制作だけで生活を維持している「プロ」のねぶた師は、私たちの師匠の世代で初めて登場しましたが、そこに至るまで師匠たちが辿った道のりの険しさ、そしてその師匠たちでさえ今もなおおかれている不安定な状況は何ら変わっていません。
このように不安定なねぶた師の立場が、後継者の裾野を広げる大きな足かせとなっています。

私たちは、こうした実態を知りながらこの厳しい世界に入ることを決意し、幸いにも大型ねぶたの制作を許されるまでこぎ着けましたが、高い技術を身につけながら、経済的な理由でねぶた制作を断念した多くの先輩や後輩の姿を見てきました。
そして今、私たち自身、独立直後からこの厳しい現実に直面しています。
言うまでもなく、ねぶた制作は、制作者が個々の創造力を競う世界であり、当会のメンバー同士もまた、自負心旺盛に競い合うライバルであります。
しかし、自らの技術の研鑽に専心できる環境、後進が参入しやすい環境に向けて、少しずつ制作者の処遇を変えていかなければならないとの思いを共有しています。

そして、いずれも一年を通してねぶた制作に専心できる「プロ」のねぶた師となることを目標としています。
師匠たちが命がけの苦労の末に維持してきたねぶたの文化、そして拓いてきたプロのねぶた師としての生き方を受け継ぎ、また未来につなぐため、さらに競い合い、技術を磨いていかなければならない若手こそ、この共通の問題解決に向けて行動を起こすべきとの認識で一致し、当会を設立するに至りました。

個人では資金的に困難であるねぶた関連商品の製作、販売により、技術研鑽や研究のために必要な資金の補助収入を確保するとともに、異なる流派の制作者が交流し、時に共同して作品を制作することは、それぞれの技術の向上にも大きく役立つことと考えています。

会としてできるところから始め、師匠たちの協力を仰ぎながら、制作者としてのこの点に関する意見を集約していく役割を果たせればと考えております。

「ねぶた師」という呼称が定着してからほぼ50年。「ねぶた屋」は、ねぶたを愛し、そこに生涯をかける決意をした者同士の現状への立場に対する率直な思いを形にした会です。
会の目的に沿い、今後新たにデビューする制作者にも広く開かれた会であり、また、一定の経済基盤を確立した会員は卒業することを定めています。
青森ねぶたの技術伝承のため、代替わりしながら未来へと続いていく組織となることを目標に活動して参ります。

2014年1月