1. HOME
  2. ナヌカビ通信
  3. ナヌカビ通信
  4. 令和6年 ねぶた祭り
ナヌカビ通信

ナヌカビ通信

令和6年 ねぶた祭り

 梅雨が明け、青森ねぶたが始まった。猛暑と豪雨で西日本や東日本各地で災害が発生したなか、青森ねぶたは天候に恵まれ、いつものねぶた祭が始まり、終わった。

 ねぶた大賞は「あおもり市民ねぶた実行委員会」、制作者は北村麻子、ねぶたは「鬼子母神」、北村麻子は最優秀制作者賞も受賞し、2017年に次いで2度目のダブル受賞であった。世界中で現実に起きている戦争や紛争で犠牲になっている子供たちへの鎮魂と、命と平和への祈りが込められての作品であろう。
 知事賞は、「JRねぶた実行プロジェクト」制作者は第7代名人竹浪比呂央、ねぶたは『足柄の公時 頼光に随う』、竹浪は優秀制作者賞を受賞したが最優秀制作者賞の3連覇を逃した。これまでの竹浪ねぶたとは違い、かつての名人たちが制作していた一人ねぶたの構図を採用した大胆な作品である。今後もこの技法極めて新たな境地を目指すのか、来年のねぶたが楽しみである。
 市長賞は「NTTグループねぶた」制作者は北村春一、ねぶたは「達谷窟伝説」坂上田村麻呂の鬼退治である。今年のねぶたで多かった鬼と斧と上から落ちてくる水しぶきのねぶたである。北村春一は竹浪と共に優秀制作者賞を受賞した。ちなみにねぶたの出来栄えだけでの点数では上位5台は北村麻子、竹浪比呂央2台、北村春一2台が審査員の評価であった。
 商工会議所会頭賞は「青森菱友会」、ねぶたは竹浪名人制作の「新天地 海峡の先へ」、義経の津軽海峡渡海伝説である。竹浪は今年、これまで多くのねぶた師たちが手掛けてきた題材に挑んだ。あえて先輩名人たちの作品に挑んだのには意図があってのことだろう。
 観光コンベンション協会会長賞は「ヤマト運輸ねぶた実行委員会」、制作者は6代名人北村隆、ねぶたは「雪の吉野山 激闘」、義経逃避行の一場面である。運行・跳人賞の高点数で北村春一制作の「青森県板金工業組合」、「黄泉比良坂伝説」に競り勝っての受賞である。

 今年のねぶたは例年になく、コマーシャルの前ねぶたの数が多かった印象がした。協賛団体からの協賛金収入は運行団体にとっては重要な資金であると同時に、前ねぶたを制作する制作者にとっても貴重な収入である。地元企業のみならず、全国的な大企業からの協賛金で成り立っている青森ねぶたは、広告代理店が仕切る都市型の商業祭りの印象である。そんな状況の中でねぶた師たちは、見栄えのするねぶたを制作するため、技術を磨き想像力を駆使して研鑽に励んでいる。過去に制作された定番のねぶたに独自の技術を取り入れ、先輩たちのレベルを乗り越えようとする努力は喜ばしいことである。
LED電球の普及、見栄えのする顔料の調達など青森ねぶたは全国の観光客をひきつけるためまれにみる進化を遂げた。まだまだこれからも時代の変化に迎合して変化しつづけることだろう。
 今年のねぶた祭りでは、跳人の人数が増えたように思われる。昔と違い跳ねることを楽しんでいる跳人は少なく跳ね方が随分と変わってきたように見える。誰でも参加できる青森ねぶたである。短い夏の一とき、日頃のストレスを発散させるため、奇声を発することを規制することを規制するべきではない。コース上を跳ね続けることなど所詮不可能なことなのだから。災害克服、疫病退治、五穀豊穣、世界平和、商売繁盛、何でもありの青森ねぶたである。「○○一番、✖✖最高」、叫んでいる方は、聞いている方が受け止めているより、自覚した自己主張ではないのだから目くじらを立てるのはやめよう。そのうちに自然淘汰されるだろう。

 ねぶたの出発地点を2か所にしたことで、参加ねぶたすべてが運行コースを1周することができ、主催者はまずは一安心だという。不都合が発生したら、また変えればいいだけである。沿道の観客の多い、少ないは主催者にとっては重要なことのようである。できるだけ多くの数字が得られる集計方法を見い出すよう苦心しているようでなんとも滑稽である。
有料観覧席の売り上げに腐心するあまり、自由観覧のエリアを規制すなど愚の骨頂である。
連日、国道沿いの運行コースはずいぶんガラガラでねぶた見物に困ることはなかった。5万人増だとか減だとか、それが青森市民の数なのか、他地域からの観光客なのか誰も正確に把握しようとしていないのだから無駄な議論はやめにして、青森市民がねぶた祭りを楽しめるようになることをまず第1に考えてほしい。

 弘前ねぷた、五所川原立佞武多、平川ねぶた、黒石ねぶた、八戸三社大祭、などなど、ねぶたを中心とした夏祭りの報道がいつものように数多く露出され、参加を取りやめる団体、新たに参加する団体、についてなど、とりわけ、子供ねぶたや地域ねぶたに関する記事や報道が目についた。それぞれの事情を抱え、困難を克服する努力に敬意を表したい。

 県外の出身者でねぶた師に弟子入りする者が増えていると聞く。本格的にプロのねぶた師を目指してのものか、別の目的を持ってのものかはわからないが、喜ぶべきことである。
ねぶたはまた他の地域に伝播することだろう。
今年デビューしたねぶた師、去年デビューして2年目を迎えたねぶた師。毎年毎年新たなねぶたに挑戦するねぶた師たち。今年のナヌカビも少し寂しい花火が青森の夏を送った。

8月8日南海トラフ地震関連、台風6号、7号による暴風、極暑による熱中症、ゲリラ豪雨、線状降水帯発生による豪雨被害、株価の乱高下、日本の最高権力者の交替など、今年はナヌカビを迎えても例年のような秋を感じない。
暑さは続くがねぶた師たちは来年に向けて構想を練っている。今年の鬼や龍、迫力受けを狙っての斧や水しぶき、独自の色使いなど、それぞれのねぶたが等しく輝いていた。どのねぶたもきれいであった。想像力は無限である。全てのねぶた師たちにエールを。

ナヌカビ通信